星の声 高らかに~2023年星組公演「Stella Voice」~

今の時代、満天の星空を見ることなんて、よほど都会から離れた自然の多い土地まで赴かなければ無理だろうと思っていた。そんなことなかった。4月1日~9日まで、9日間という短い期間ではあったけれども、宝塚バウホールには連日満天の星空が広がっていた。

98期生、研12になりたてほやほやの天華えまさんを筆頭に、星組の若手スターが出演したバウ・ワークショップ「Stella Voice」。普段ソロで歌うことの少ないいわゆる下級生たちが、自分の選んだソロ曲を披露し、歌を中心にダンスやトークも繰り広げる公演。それぞれの歌の完成度も素晴らしく、また、ダンス巧者の天華さんが主演であるだけに、これまで宝塚ではなかなか見ることのなかったコンテンポラリー・ダンスの場面もあり、見ごたえ十分の作品だった。

好きな場面はたくさんたくさんあるのだけれど、やはりまず感動したのはこの公演の主題歌だ。舞台上で輝く17人の出演者は「星」であり、彼女たちの声は星の声、「Stella Voice」として響き渡る。爽やかでキラキラした曲の中で「Star Troupe!歌え!パッション!」という歌詞が出てきた時にはさすが星組だなあと笑ってしまったけれど、贔屓の主演公演にこんな素敵な楽曲が作られるなんて、幸せで嬉しくて、明るく楽しいプロローグなのにとめどなく涙が溢れてきた。

そして黒燕尾。私の中でトップ3に入るくらい大好きな黒燕尾になりました。まずもって天華さんが真ん中で踊られる黒燕尾に「Estrellita」なんて甘々なラブソングを選曲してくださったことに大感謝だし、マリアッチ大好き芸人の私からしたらメキシコの作曲家の曲というだけで血沸き肉躍る。そして、曲のアレンジも素晴らしいこと。甘く柔らかいゆったりしたテンポで始まり、アップテンポになってからは陽気で華やか、力強さもありながら軽やかでしなやかな、まるで天華さんそのもののようなアレンジ。加えて振付はこれぞ男役の美学!クラシカルな型の美しさを保ちつつ、ぶっちゃけトンチキにしか見えない決めポーズをあんなにも素敵に見せることのできる男役さんたちの格好良さたるや。感動した。贔屓が真ん中の黒燕尾で泣いちゃうかなと思ったけれど、終始最高すぎてにやけっぱなしだった。マスクがあってよかった本当に。

そしてそして、それぞれのソロ曲もま~~~~~素晴らしくて。この子こんなに歌が上手だったんだ!?とかこんな選曲するのか!!とか新しい発見と感動の嵐だった。歌った順番に感想をば。

★天華えまさん 「街灯に寄りかかって」(ME AND MY GIRL)

ご本人がこの作品をお好きだと存じていたので“らしい”選曲だなあと思った。ただ、こんな短い曲の中でもお芝居としてしっかり成立させているところがさすがだなあ。ちょっとしたニュアンスや目の使い方でサリーを待つビルの心情を鮮やかに表現されていた。「違う、僕は違う」の笑いを含んだ歌い方も、「彼女はそんな子じゃない、はず」の切ない表情も、彼とそこにいない彼女との物語を感じずにはいられない。

★詩花すずさん 「顎で受けなさい」(ME AND MY GIRL)

すずちゃんのことを大好きになりました。もうとにかくかわいい!!歌が上手!!くるくる表情が変わるところが本当にかわいくてたまらない。「悔しいことが起きたら」「肝に銘じていなけりゃダメと」が特に好き。千秋楽に向けて固さがどんどんほぐれて、のびのび表現している姿が最高だった。

★世奈未蘭さん 「未来へ」(エクスカリバー)

なぜかせなちゃんの「未来へ」を聞くと涙が溢れてくるという現象を幾度となく体験しました。なんでしょうかね…下級生特有の、未来に希望しかないあのキラキラ感に感動したんでしょうね。どうかそのまま純粋なままのせなちゃんでいてね…。あとせなちゃんのビッグスマイルが下級生時代のずんさん(桜木みなとさん)みたいでキュンとしちゃう。

★碧羽陽さん 「カラー・オブ・ザ・ウインド」(ポカホンタス)

似合う~~~~!!!この曲ハルちゃんにめちゃくちゃ似合うね!!!身のこなしが本当に美しくて、少し動くだけで「この子は踊れる子だ!!」と思うのだけど、歌もま~~~お上手。「青い月に吠える狼と」の歌い方がすんごく好きだった。

★瞳きらりさん 「蒼氷色の瞳」(銀河英雄伝説@TAKARAZUKA)

おったまげました。おめめちゃん、明日エトワールやってもおかしくないレベルの上手さ。ちょっと硬質で透き通るように美しい、クリスタルのような歌声で、一瞬で大好きになってしまった。高音の美しさがピカイチ。今すぐエトワールやってお願い。

★彩紋ねおさん 「ロザリオの祈り」(落陽のパレルモ)

さいもんくん、Wトリオに入ってたからきっとお上手なんだろうな、とは思っていたけどまさかここまでとは。衝撃。ラストの「神よ」の伸びが凄まじくて腰抜かしちゃった。まずは新人公演でいっぱい歌ってほしいな。

★大希颯さん 「ひとかけらの勇気」(THE SCARLET PIMPERNEL)

あいみちゃんって研いくつだっけ???研12???は???研5???さすがに詐称でしょ。この学年でこんなに男役として成立してることあります???有り得なくないですか???歌上手すぎるし表現力も素晴らしいしこれで研5???これからどこまで大きくなっちゃうのか楽しみで仕方がない。「登れない山、渡れない川」で前に歩み出てくる時のカリスマ性が半端なかった。

★羽玲有華さん 「僕は怖い」(ロミオとジュリエット)

ロミオ役やってました???ってくらいの完成度。「だがふと過る」で不安げに目を泳がせるところから引き込まれすぎてオペラグラスでずっと追いかけてしまった。天華さんが「死」としてお稽古に付き合ってくれたこともあったそうで、それもあるのか奥行のある表現だったなあ。難しい曲だろうにきっちり歌いこなしてるところはさすがとしか言いようがない。

★星咲希さん 「心はいつも」(パパラギ)

今回の公演での大収穫のひとつが「のぞみんの歌声が好き」という気付きを得られたことなのですが、この曲すんごくのぞみんにピッタリで素敵だった…。歌ってる時の表情もね、私の好きな娘役さんの表情だった。ドラムの活きが良すぎたのはめちゃめちゃ笑ったけど。

すべて~~が~~~は~~~じま\デデッデデッデデッデデッデデッデデッデッドンドンシャーーーン!!!/

★稀惺かずとさん 「オルフェンズの涙」

意外な選曲!と思いましたがこれは天才的な選曲でした。声質と曲がぴったりハマっている。自分にぴったり合う曲見つけるのって至難の業なんですよね。それを見つけたつんちゃんはすごい。中性的な声が本当に素敵だなあ。曖昧な笑顔で会釈しながらハケていく姿もso cuteで大好き。

★藍羽ひよりさん 「ダンスはやめられない」(モーツァルト!)

ひよちゃんがこの曲にチャレンジしてくれたことに感動した。得意な音域の曲じゃないんだろうな、と思ったし、きっとこの選曲は賛否両論だろうな、とも思った。それでもこの曲にチャレンジして、若さゆえの体当たりで一生懸命表現をして、千秋楽に向けてどんどん良くなっていって、何より出てきてからハケるまでコンスタンツェとしてそこに立つひよちゃんの姿に本当に本当に感動した。

★世晴あささん コンパス・オブ・ユア・ハート(シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ)

舳先を意味するバウホールで歌うのにこんなにピッタリな曲がありますか。せはるんが持つ圧倒的な陽の気にもピッタリ。そして私はこの曲が大好き。チャンドゥとして参戦したいレベルでガチ大好き場面だった。せはるんの笑顔と「無事に帰ったら君の周り見てごらん」で客席に語りかける姿が眩しくて仕方なかった。

★碧音斗和さん 「バラ色の人生」(オーム・シャンティ・オーム)

礼さんが降りてきている瞬間があって鳥肌が立った。あいりちゃんは歌もお芝居もダンスも全部出来るんだな、と改めて実感した場面。私結構前からあいりちゃんは新公卒業していると思っていた。まだ新公学年だった。さすがに詐称。「もし悪魔がダイス渡したら」のとこのお顔がすんごくすんごく好きだったし本当にダイス持ってるんじゃないかって毎回本気でワクワクしていた。

★鳳真斗愛さん 「僕の願い」(ノートルダムの鐘)

カジモドいました。バウホールにカジモドが。バウホールっていうかここはもはやノートルダム大聖堂なのかなと思いました。青空見えたし白い鳥も飛んでたし鐘もリンゴン鳴ってた。たった一曲の中でこんなにも情景や感情が伝わってくるのはもえかちゃんの表現力の高さがあってこそ。感動だった。歌いだしの虚無感からの終盤に向けて歌とともに感情が溢れ出てくるような持っていき方が大好きで…めちゃくちゃ泣いた。

★紅咲梨乃さん 「過去への旅」(アナスタシア)

私にとってアナスタシアは本当に本当に大切な思い出の作品で、あまりにも大好きすぎて初日にイントロ流れた瞬間びっしゃびしゃに泣いてしまった。日本初演版と思われるアーニャソロバージョンで、アーニャの抱える不安や目の前に広がる希望が伝わってくる、どんちゃんの柔らかい声がまた耳に心地良い、そして自分が何者であるか知ることを決意した瞬間の目の輝きが美しい、本当に最高の場面だった。

★二條華さん 「あなたを見つめると」(THE SCARLET PIMPERNEL)

にじょはなちゃんのあまりの美しさに息が止まった。女性と少女のちょうど間にいるような澄んでいて柔らかい歌い方が素敵だったなあ。初日あたりは緊張していたのか手が震えていたりもしたけれど、さすが上級生、歌のクオリティは全く下がらない。「まだ私、あなたのこと愛していたい」の表情が本当に悲しそうで、オペラグラスで見ながら涙が溢れてきた。切ない表情が上手に出来る娘役さんって本当に好き。きゅん。

そして…この公演が決まってから絶対歌ってほしいな、と思っていた「愛の旅立ち」を天華さんがラストに歌ってくださって本当に本当に嬉しかった。夢って叶うんだな…。