夢、愛、希望、魔法…全てが詰まったあたたかいミュージカル~劇団四季「アナと雪の女王」~

劇団四季でミュージカル「アナと雪の女王」が上演されると知った時は、公演が始まって1年以内くらいには観に行きたいな、とのんきに思っていたが、運よくチケットを手に入れることが出来、初日からさほど時間を置かず観に行くことが出来た。ネタバレっぽいところもあるので無理な方は読まないでね。曲名は日本語版が分からないため原曲名で書いてます。

舞台版は私の大好きな「Vuelie」で幕が開き、追加された楽曲「Let the Sun Shine On」から物語が始まる。ディズニー作品らしく、ワクワクするような曲調でアレンデールについて説明をしてくれるこの曲と共に現れるヤングエルサ、ヤングアナはとにかく可愛くて可愛くて…子役のお二人、とても素敵。ヤングエルサ役佐々木奏音さんは自分の持つ力とアナに対する愛情の中で戸惑い苦しむ心情をしっかり表現していたし、ヤングアナ役桑原広佳さんはお転婆で甘えん坊、本当に可愛らしくて、彼女の一挙手一投足に客席があたたかい笑いで包まれていた。子供出されちゃうと弱い私はその二人を見て、泣くところじゃないのにちょっと涙ぐんでしまった。

両親と死別し、大人になったエルサとアナ。私が観た日はエルサ役岡本瑞恵さん、アナ役三平果歩さんだったのだが、このお二人がまた素晴らしい。本当に、アニメから飛び出してきたのか、というくらいの完成度。特にアナ役の三平さんはとにかく表情豊かで、溌剌と動き回る元気なアナそのものだった。クリストフと雪山を登っている最中に繰り広げられる「What Do You Know About Love?」はセリフの掛合のような歌が楽しい。そして登場するオラフ!!めちゃくちゃオラフです!!キャスト一覧を拝見したら女性のお名前だったので「???」と思ったけれど、めちゃくちゃオラフだった。可愛い。オラフがそこに存在するという感動。歩いたり踊ったりバラバラになったり溶けたりもう最高。大好きな「うん。なんで?」もきっちり再現されていて感無量。子役ちゃんと手を繋いだりするのたまらない。好き。

舞台版ではそれぞれのキャラクターが登場する順番が変わっているのに伴い楽曲の順番も変わっていて、そりゃそうだよなって感じだけれど、「Let It Go」を一幕ラストに据えているのは本当に大天才だなと思った。この楽曲で作品中一番の魔法が使われているのだけれど、これは本当に、全人類に見て欲しい。本当に感動する。あれは完全に本物の魔法です。幕が下りてからの客席のどよめきがその凄まじさを物語っていた。私はしばらく座席から立ち上がれなかった。

二幕はね、全国1億5000万のオーケンファンの皆様、お待たせしました!オーケン・オン・ステージから始まります!!やったね!!ちなみに私はオーケンファンでもないのだけれど、このシーンは好きすぎて何度でも観たい。オーケンが可愛い。そしてお店の中のセットをぜひじっくりしっかり見て欲しい!!作りこみが凄くてしばらく芝居そっちのけで見入ってしまった。私の記憶が正しければ、ミッキーっぽいものが隠れている。記憶違いだったらごめんなさい。私も人生をヒュッゲかノン・ヒュッゲかで判断していこうと思います。(大嘘)

必殺手のひら返しを見せてくれるハンスもとても良かった。それまでの物腰の柔らかさはどこへやら、冷たくアナを突き放す姿は、その展開を知っていても本当に憎らしくて…。ラスト、アナがぶん殴ってくれて最高にスカッとした。

そして、私がこの舞台版で最も好きだと思ったのが、エルサの心情を一幕からしっかりと描いていることだ。映画版はどちらかと言えばアナの冒険に重きを置いている印象で、アナに対してのエルサの気持ちはふわっとしていたが、舞台版では、子供時代のシーンで「アナのためなら何でもする」という趣旨のエルサのセリフが追加されていたり、戴冠式の場面にはエルサの心情を表現した「Dangerous to Dream」という楽曲が追加されている。エルサが最も恐れていることは何なのか、彼女が己の力の暴走の先に見ているものは何なのか。それがしっかり描かれているからこそ、クライマックス、アナが凍ってしまった時に心情を吐露するエルサに心奪われ、涙が溢れてくる。岡本さんのエルサは苦悩する表情もとっても美しくて見入ってしまう。そして、心の奥にあたたかさ持った人なのだと感じる。アナに向けての「魔法はあなたよ。」というセリフがとても好き。自分の力を恐れ、心の扉を閉ざしていたエルサにとって、諦めることなくその扉をノックし開こうとしてくれるアナこそ、その愛こそが魔法だったのだ。愛は開かれた扉。アナとハンスのいちゃこらソングがここに繋がろうとは。

フィナーレは愛と希望に満ち満ちていて、あまりの多幸感に涙腺が完全に決壊した。まさかあんなに泣くとは思わなかったし、苦手なスタンディングオベーションも迷わずしちゃうくらいの感動と興奮。一生忘れられないと思う。

もうとにかく素晴らしくて凄まじくて心の底から「観られて良かった!!!」と思える作品だった。演出や装置もそうなのだけれど、やっぱり一番の魔法は役者さんのお芝居だな、と私は感じた。アニメの中にしかいないはずだったキャラクター達の魂を己に宿し、活き活きと歌い踊り動き回る姿はとても素敵で愛おしくて。私たちを励ましてくれているような、そんなポジティブなエネルギーがビシビシ伝わってきた。オラフの「僕たちは乗り越えられる!」というセリフは、コロナ禍を生きる私たちへのメッセージとも受け取れて、胸に沁みた。何度でも観たい。叶うなら年内にもう一回観たい。そして沢山の人に観て欲しい。雪の女王が主人公でありながら、とてもあたたかい作品なのだと、改めて思い知った舞台だった。