どうやって伝えよう、ぴーマキュが最高だったということを~2021年星組公演「ロミオとジュリエット」~

2月にムラで観た時はA日程で、ぴーすけ(天華えまさん)演じる死、いわゆるぴー死に釘付けになっていた。今まで観てきた死とは違う、無垢な死の姿が美しく、とっても素敵だったのだけれど、今回初めてB日程を観て、ぴーマキュ(ぴーすけ演じるマーキューシオ)最高やんけ!!!!となってしまった。今回はぴーマキュのことだけを語りたいと思います。

何が素晴らしかったかというと、ぴーマキュはとにかく物語のあるマーキューシオなのだ。一つ一つの動き、視線、セリフに奥行きがあって、背景に何があるのか、どんな心情なのか、ついつい深読みしてしまう。そして一度考え始めたら最後、ぴーマキュのことしか考えられなくなる。そんな魅力があるのがぴーマキュなのである。

「世界の王」を歌う前、マーキューシオはベンヴォーリオに対して、「ロミオはまるで、お前の王様だな」とちょっと小馬鹿にした感じで言う。しかしその後の展開を観ると、誰よりマーキューシオにとって、ロミオが王様であることが分かる。仮面舞踏会でティボルトに正体がバレてしまうというロミオのピンチにいち早く気付き、ベンヴォーリオを押しのけてロミオを助けに行ったのはマーキューシオだし、「決闘」の場面で真っ先にティボルトからロミオを助けようとしたのもマーキューシオ。「あいつ熟女が趣味だったのか」というセリフは、歴代マーキューシオは揶揄するように言う人が多かったけど、ぴーマキュは「なるほどね」みたいな、完全に受け入れている言い方をしていたし、どう考えてもぴーマキュはロミオが大好き、ロミオ全肯定派、超強火ロミオ担。だからこそ、2幕冒頭は大変に切ない。

2幕冒頭の「狂気の沙汰」では、ロミオとジュリエットの結婚を知ったモンタギューの若者たちが、ロミオを責め立てる。そんな中で、ロミオの腕を掴んだぴーマキュは、縋るような目でロミオを見ていた。ロミオが裏切るはずないと信じたくて、「そんなことある訳ないだろ」って笑って欲しくて、揺らぐ気持ちが瞳に映っていた。でも、ロミオの頭の中には、ジュリエットとの愛を貫くことしかない。否定してくれないロミオに対して、マーキューシオは刃を向けるも、ベンヴォーリオに腕を掴まれ止められる。ベンヴォーリオが離れた時、マーキューシオは、ベンヴォーリオに掴まれた場所を一度ぎゅっと握るのだ。彼はその瞬間、一体何を考えたのだろうか。愛する親友に刃を向けてしまった後悔だろうか。ここまでしても揺るがないロミオの愛の強さに打ちひしがれたのだろうか。ぬるま湯みたいな心地よい3人の時間がいつまでも続けば良いと思っていたのにそれはもう叶わない、その悲しみが過っただろうか。そんなことを考えさせるのがぴーマキュ。またの名を沼。

そして、劇場で見ているのにうっかり嗚咽を漏らしてしまった「マーキューシオの死」。ティボルトに刺された直後、傷口に触れて、強がって少し笑った後、手についた血を見て、「気が遠くなる」と泣きそうな顔で倒れこむマーキューシオ。いつも一緒にいたのはベンヴォーリオなのに、ここでのメッセージは9割ロミオへの言葉。やっぱりロミオが王様だったんだね。「愛する友よ、別れの時だ」でやっとベンヴォーリオと、ロミオの顔を順番に見ながら微笑むぴーマキュ、美しくて儚くて哀しくて、オペラグラスを持つ手がぶるぶる震えた。この場面はぴーマキュもだけど、ぴーマキュが傷口を押さえる手に自分の手を重ねていたり、亡骸を茫然と見つめたりしているあかさん(綺城ひか理さん)ベンヴォーリオがまた涙を誘う。正直こんなに泣くとは思っていなくて、ここまででリアルにマスクがびちょびちょになった。

その後。「僕は怖い(リプライズ)」では、自分が死んだことを理解してからロミオを探すように手を伸ばすぴーマキュにまた泣かされる。死にたくなかっただろう。ずっとずっと、3人でバカやって笑い合っていたかっただろう。亡くなる瞬間は笑顔を見せていたのに、死の世界で独りぼっちになり不安そうな顔をするマーキューシオ。大人たちの諍いに巻き込まれ、傷付け合うように仕向けられてきた哀しい子供の末路。切なくて、苦しくて、心が軋んだ。「世界の王」や「綺麗は汚い」で見せる、キラキラした笑顔のやんちゃな彼が本来の姿なんだろう。あの笑顔のまま生き続けられたら良かった。マーキューシオだけじゃなく、本当はベンヴォーリオも、ティボルトでさえ、きっと傷つけあうことなんて望んでなかった。瀬央ゆりあさんのティボルトはどこか、瀬央さん自身の人の良さがにじみ出ていたから、ちゃんと話をすることが出来れば仲良くなれてたかもな、と思ってしまって、それもまた悲しい。

とにかく本当にぴーマキュは最高だった。ここまで書いて、悲しい気持ちになってきてしまったので笑顔になれる場面を思い出そうと思う。やっぱり「綺麗は汚い」だよね。お花投げる時に「わーーーー」って言ってるのがめちゃくちゃ可愛かったし。くらっち乳母ちゃんへの壁ドン、容赦なく頬っぺたをぶっ刺す指、なによりあの輝く笑顔。最高だったな。生きててほしかったな。あと緞帳降りる時、ちょっとおちょけた感じの顔して手を振ってたぴーすけがマジ可愛くてたまらんかった。

B日程のBlu-ray発売決定が嬉しくてたまらない。絶対買います。そして家宝にします。宝塚歌劇団様、TCA様、ご尽力いただいた各所の皆々様、本当にありがとうございます。