メンタル最強ヒロイン、その名はアーニャ~2021年宙組公演「アナスタシア」~

アーニャ。可愛いお名前。アーニャ。声に出して呼びたいお名前No.1だねこりゃ。ディミトリもグレブも歌中に無駄に呼ぶはずだよねなんなら叫んでたもんね。アーニャ。はー可愛い。

そんな可愛らしいお名前とは裏腹に、メンタルが最強、それがアーニャなのである。なんといってもペルミからペテルブルクまで徒歩移動しちゃうメンタルの強さ。細かいことは分からないが、たぶん直線距離でも日本縦断くらいある。普通だったら心が折れるようなそんな長い長い距離を、アーニャは歩いてきたのだ。しかもたった一人で。メンタルつよ。

そんなアーニャに惹かれる二人の男、ディミトリとグレブ。二人が彼女に惹かれた理由の一つに、「瞳」がある。いやあれだけ可愛ければ顔っていうのもきっとあるけど、それじゃあロマンチックじゃないだろう?

ディミトリの歌う「She Walks In」でも、グレブの歌う「The Neva Flow」でも、「瞳」という歌詞が出てくる。きっとアーニャの瞳には強い光が宿っており、それを目の当たりにした彼らは、アーニャに惹かれてしまったのである。彼女の瞳に映る内面の強さ、それ故の美しさに。

私の中で最も印象的だったのは、「In The Crowd Of Thousands」だ。ディミトリが子供の頃、王族のパレードを人垣の中から見ていた、その時を懐古して歌うこの歌を聞いた時、私もそこにいたような気がするくらい、あの日ディミトリが見たアナスタシアの姿をはっきりと見た。背筋をピンと伸ばしてパレードの馬車に乗る、瞳に強い光を宿した女の子。恐れるものなど何もないとでも言うように、真っ直ぐ前を見つめている。それは、アーニャそのものではないか。弱冠8歳で大物の風格。そりゃあメンタル強いわ。余談だが、BW版ではアーニャのパートで「I tried not to smile but I smiled」という歌詞があって、きゅんとした。笑わないようにしたけど笑っちゃった、って最高に可愛くない?

グレブと対峙した際、アーニャが持ち前のバリ強メンタルを見せつける。グレブはアナスタシアを殺すためにパリに来た、分かっていながら、「君は誰だ」とのグレブの問いかけに高らかに宣言するのだ。「私は大公女、アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノフ!」く~~~!!!シビれる、憧れるゥ!!!!

さらにはアーニャさん、マリア皇太后に対してもそのメンタルを遺憾なく発揮している。「あなたの母親の正式名称は?」という質問に対するアーニャのアンサーは「まだ続けますか?」だった。もしここがジョジョの世界なら、マリア皇太后はアーニャの眉間に人差し指を突き立て、「質問を質問で返すなぁーっ!」と叫んでいるところだ。恐れ知らずのアーニャさんには本当に恐れ入る。

メンタルの強さはポジティブさに結び付く。どんな逆境でも果敢に挑み、人を真っ直ぐに信じることのできるアーニャの姿に、勇気が湧いてきた。この作品の主人公は間違いなくアーニャだ。宝塚版はディミトリが主人公の物語として書き換えられているけれど、それでもやっぱり、主人公はアーニャなのだ。彼女の物語は、暗い影の差すこのご時世に、明るくてあたたかい光を灯してくれるような、希望に満ちた物語だった。

しかし、まさかこれが、まかまど最後の作品になるなんて…頼む、誰かこれは「夢物語だった」と言ってくれ…。