私はなぜ「My Petersburg」で泣いてしまうのか~2021年宙組公演「アナスタシア」~

宝塚歌劇団宙組公演「アナスタシア」。

ナニコレ絶対名作じゃん、という期待を裏切らない最高の出来だった。

大きすぎる愛のままにわがままに、感じたままに感想を殴り書きしていきたいと思う。

 

私が何度聞いてもどうしても泣いちゃう歌、「My Petersburg」。

真風涼帆さん演じるディミトリが、このペテルブルクでこれまでどのように生きてきたか、

星風まどかちゃん演じるアーニャに伝える一曲。

曲調は明るく、ディミトリも笑顔で歌っている。アーニャだって笑顔聞いている。

でも、私は号泣している。なぜ。まだ序盤だぞ。

 

最初に見たとき、自分がなぜこんなにも泣いているのか全く分からず戸惑った。

だってディミトリもアーニャも楽しそうだもん。私はなんで泣いてるの?

もしもディミトリが「俺のペテルブルク」と歌ってくれたなら、

「Home, Love, Family, フレンチ,イタリアン,ペテルブルク」などという

下らない感想をぶちかますだけで済んでいたに違いない。なのにどうして?

 

2回目の観劇の後、霞が関から乗った電車の中で、私はディミトリの事ばかり考えていた。

まさかこれは恋…?いやだわ、私ずんちゃん(桜木みなとさん)が好きなはずなのに。

そして、電車が新宿に到着したあたりで、一つの結論に達したのである。

「…ディミトリ、自分の生き方がズルいって気づいちゃってんだよな。」

そう、ここが私の琴線に触れてしまっていたのだ。

 

「ズルく生きた」

「My Petersburg」の最初の歌詞がこれだ。

これ。この時点で私もうディミトリに落ちてた。早すぎない?最初の歌詞だよ?

なんというか、この言葉をあんなに明るく歌うディミトリの健気さにやられてしまった。

詐欺師だし、冒頭からスリもやってるディミトリだが、完全に悪い奴ではない。

それは、ヴラドを助けてあげるあたりからもわかることだ。

平和な時代ならきっと、彼は「ズルくない生き方」を選んでいたであろう人間なのだ。

そんな彼が、時代によって「ズルく生きる」ことを余儀なくされた。

「時が来れば飛べる」、そう信じて、たった一人でズルく生き延びたのである。

なんて健気。健気・オブ・ザ・イヤーをあげたい。

 

それだけでも十分泣けちゃうのだけど、

さらに、謝礼の受け取りを拒否する場面でまた泣いてしまうのだ。

マリア皇太后とのシーン。ここ普通に泣けるシーンだけどね。

彼は、これまでの生き方に、少なからず後ろめたさがあったのではないか。

「ズルく生きた」と認めているということは、

「ズルくない生き方だってある」と知っているということだから。

自分は、生きていくためには「ズルく生きる」しかなかった。

でも、今まさに

「ズルくない生き方」に路線変更するためのお金が手に入ろうとしているところで、

彼は「邪まな計画で手にしようとしたお金の受け取りを拒否する。」という

「ズルくない選択」をするのだ。…健気すぎんか、ディミトリくん。

2回目の観劇の際、この受け取り拒否のシーンを見越して

1回目より「My Petersburg」で泣いた。もうマスクがびしょびしょになる程。

嘘、それは盛りすぎた。でもとにかく泣いた。

ディミトリは本当に素敵ないい奴だ。そりゃあ好きになっちゃうよ、アーニャも私も。

私もディマって呼びたいけどちょっと恥ずかしい。これが恋かしら。

 

ディミトリ、まじで幸せになってくれよな。