全人類にB日程を観てほしい~2021年星組公演「ロミオとジュリエット」~

さあ皆さん、準備はよろしいですか?いよいよロミジュリB日程Blu-ray発売が1週間後に迫ってきましたからね、またロミジュリの話をしましょうね。

ロミジュリ、幸運なことにA日程もB日程も観ることが出来て、やっぱりA日程もとても良かった。ムラで見た時、友人の呪詛のおかげでぴー死(天華えまさん演じる死)しか見えていなかったのだけど(LINEで呪いのようにぴーすけぴーすけ送られてきていた)、東京で観た際にはかりんちゃん(極美慎さん)のマーキューシオもしっかり見る事が出来たし、何より愛月ひかるさん演じるティボルトの、ジュリエットに対する深い愛情と慈しみを感じられる表情をこの目で見る事が出来、とても良かった。

しかし、A日程を観るほどに、やっぱり私はB日程のティボルト・ベンヴォーリオ・マーキューシオがどうしようもなく好きだったのだと思い知ってしまった。

A日程瀬央かりんベンマキュは、見るからに体育会系のイケメン、とにかく女にモテるコンビ。EXILE系ベンマキュと名付けよう。対してB日程あかぴー(綺城ひか理さんと天華えまさん)ベンマキュ、いつでも仲良し、みんなに愛されみんなを笑顔にするコンビ。言うなれば、嵐系ベンマキュ。どう考えたって瀬央かりんベンマキュがスタンダードのはず。だって既視感があるから。歴代のベンマキュの関係は、恐らくこういう関係性だったのだと思う。(新公含め全部見た訳じゃないから一概には言えないけれど。)あの環境の中にあっては、ああいうサバサバした人格が育まれるのだろうか。私はそうではないと思っている。だから、B日程がなかなか抜けない棘のように心に刺さっているのだ。

中学生の頃、いわゆるヤンキーと呼ばれるタイプの人がクラスにいた。彼らは素行は悪いしいつも怖い顔をしていたけど、話せば愉快で、具合が悪ければ心配してくれたり、下らない冗談で笑わせてくれたり、根っから悪い奴という訳ではなかった。そしてとても印象に残っているのが、怒りを爆発させて教師に反発している姿。私はその姿を見て、怖いというより、寂しそうだな、と感じた。彼らがどうして寂しそうなのか、その理由や心の内は私には計り知れないけれど、まるで、そうやって自分の存在を主張していないと自分自身が消えてしまうと思っているかのような、苦しくて寂しい気持ちを、彼らの行動から感じていた。

その時と同じ気持ちなのだ。あかベン、ぴーマキュ、そして瀬央ティボルトを見ている時の気持ちは。誰かがいてくれなきゃ生きていけないと強く感じているのはあかベンもぴーマキュも瀬央ティボルトも同じで、だからこそ、彼らは一緒にいてもどこか寂しそうで、誰かと衝突し傷付ける事で自分の存在を証明しているかのようだった。そして、そこにどうしようもなく「リアル」を感じていた。あれだけ体を寄せていても、心には見えない壁があることがはっきり見える。中学生の頃の“彼ら”とあかぴーベンマキュが重なり、湧き起こるノスタルジックな気持ち。それが、私のB日程への異様なまでの熱狂の正体だった。

もう一つ、AとBの対比で心に引っかかっているのが、「街に噂が」の場面。どちらもロミオを糾弾しているのだが、理由が違うように見える。Aは「どうして、よりによってキャピュレットの娘を選んだんだ」だが、Bは「俺たちよりジュリエットを選ぶのか」と言っているように見えるのだ。だからこそ、Bの方がより一層寂しい子供たちに見えて切ない。この関係が崩れれば、きっと自分は自分でなくなってしまう、だから戻ってきてほしい。そんな悲痛さがBのベンマキュにはあった。

瀬央さんが宝塚カフェブレイクに出演された際、「生まれた場所が違えば、ベンヴォーリオだってティボルトのようになっていたかもしれない」と仰っていた。あかさんは「三人の中では大人のように振舞っていても、結局ベンヴォーリオも一人では何もできない子供なのだ」と。ぴーすけは「マーキューシオは寂しさを埋めるために仲間や女性に手を出す」と語っていた。彼女たちが語る彼らは、どこか寂しさを纏っている。そこが狂おしいほどに好き。

観れば観るほど、考えれば考えるほど深みにハマる2021年星組ロミオとジュリエットB日程。当初発売する予定のなかったBlu-rayが発売になるなんて、夢のような話だ。みんなこぞって買おうね。繰り返しぴーマキュの死に様を見て何度だって泣こうね。そしてこの素晴らしい作品を未来永劫語り継いでいこうね。Blu-rayは6月20日(日)発売だよ!!